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ガラパゴスを知る

ガラパゴスってどんなところ?

ガラパゴス基本情報

ガラパゴス諸島は、南米大陸から約1,000km西の太平洋上に浮かぶ群島です。

全部で234の島や小島、岩石などから成り立っており、このうち面積が10㎢以上の島が13あります。全ての陸地を合わせた総面積は、7,985㎢になります。
これは沖縄県の約3.5倍の広さで、全体は東西・南北それぞれ約300 kmの範囲に広がっています。
また、ガラパゴス諸島の海岸線から40海里(約74 km)をとりかこむガラパゴス海洋保護区は、面積が133,255 ㎢の世界最大級の広さがあります。

諸島は、海底火山の噴火により誕生した火山島です。火山活動のほか、プレートテクトニクス、地盤沈下、海水準変動などの地質学的プロセスによって絶えず変化しており、推測的な仮説によると500万年前には現在と異なる、少なくとも7つの主要な島が存在していたと考えられています。
ホットスポットと呼ばれるマグマの吹き出し口が、諸島の西方(現在のフェルナンディナ島のラクンブレ火山とイサベラ島のセロ・アスール火山の間)に位置し、現在でも絶えず火山活動が続いています。
諸島の乗った海底のナスカプレートは、年5.9 cm南米大陸に向かって東南東の方向に動いていると考えられており、海底火山の噴火とプレートの移動によって、現在の群島が形成されたと言われています。

したがって、諸島南東の、大陸寄りの島が最も古い歴史を持ち(300万年~400万年前形成)、ホットスポット近くの西方の島は、現在でも火山活動をおこなう新しい島(数万〜数十万年前の形成)となっています。
古い島では風化・浸食が進み、比較的なだらかな地形となっている一方で、新しい島では、真っ黒な溶岩原の広がる、険峻な地形が多く見られます。
これは、諸島の中での、変化に富む環境を生み、生物がそれぞれの環境に適応して進化した要因の一つともなっています。

進化の実験室

海底火山の噴火によってできたガラパゴス諸島は、大陸と一度も陸続きになったことがないことから、生息している生物は何らかの方法で、大陸(あるいは大洋)からガラパゴスへ辿り着きました。
しかし、大陸との約1,000kmという壁を乗り越えてやってこられたのは、風や鳥が種子を運ぶ植物や、乾燥に強いハ虫類、空を飛ぶことができる鳥類等、極限られた生物だけでした。

ガラパゴス上空は強い貿易風が大陸から太平洋に向かって吹いており、また、海では海流が大陸からガラパゴスに向かって流れているため、一度諸島に辿り着いた生物は元に戻れない、「隔離」された状態が作られました。
このような自然条件の下、辿り着くことができた生物が隔離された地で独特の環境に適応し、子孫を残したことにより、ガラパスにしかいない固有の生物が多数生息する「進化の実験室」とも呼ばれる地が誕生しました。
ガラパゴス諸島で確認された生物の種数は、約7,000種、このうち約2,000種が、ガラパゴスにしかいない固有種であることが分かっています。

書籍「ガラパゴスのふしぎ」の公開

2010年3月に当会役員13名が分担して執筆し、ソフトバンククリエイティブ株式会社よりサイエンス・アイ新書として発行した書籍「ガラパゴスのふしぎ」を、下記のリンク先で公開しております。

・HP上での公開にあたり、誤字・誤記の修正と軽微な表現変更を行った箇所があります。
・情報は執筆当時のものになりますが、順次、更新情報の追加に努めています。
・更新情報はページ下に示した「「ガラパゴスのふしぎ」出版(2010年3月)以降の更新情報」からご覧ください。

はじめに(小野幹雄)

2009年は、「進化論」で有名なチャールズ・ダーウィンが生まれて200年、彼の著書『種の起源』が発刊されて150年という節目の年だった。

19世紀は、科学史において、ときに「ダーウィンの世紀」と呼ばれることがある。それほど、彼の生物進化論は、人類の生物観や自然観を一変させるものだった。そして、この進化論をはじめて世に問うたのが『種の起源』であった。

彼にその進化思想を抱かせる契機となったのは、1831年から5年にもおよんだ軍艦ビーグル号での航海であった。世界の諸地域、特に南半球の自然や動植物についての知見、中でもガラパゴス諸島を訪れて見聞きした驚きが、その着想のきっかけになったといわれている。

ガラパゴス諸島は、赤道直下に浮かぶ群島だ。火山活動によりできた島で、その活動は今なお続いている。また、ここには、諸島の名前にもなっているゾウガメ(スペイン語で「ガラパゴ」)をはじめ、世界で唯一海に潜るイグアナ、くちばしが13通りにも変化したフィンチ、木になったキク科のスカレシアなど、特異な動植物たちが多数いる。まさに「進化」の宝庫である。

1978年、ガラパゴス諸島は世界自然遺産の第1号に登録された。ダーウィンの訪問から170余年を経て、世界的な観光地のひとつとなった。ダーウィンが訪れた頃は数百人であった島民は3万人に達する勢いで、観光客は年に17万人を超える。居住者と観光客の増加にともない、人や物の往来も増加したため、外来種問題が深刻化し、2007年には、ついに危機遺産にも指定されてしまった。

ガラパゴスの自然保護はエクアドル政府(国立公園管理局)の責任のもと、学術的には、国際的な機関であるチャールズ・ダーウィン財団とその下にあるチャールズ・ダーウィン研究所による指導と協力で進められてきた。
そのダーウィン財団を支援する組織は世界に11あるが、日本でただひとつその役を果たしているのが私どもの「NPO法人日本ガラパゴスの会(JAGA)」である。
本書はこのJAGAの役員13名が分担して書いたものである。ダーウィンと進化論とガラパゴス、ユニークな生態系とそれを特徴づける生き物たち、そして近年の外来種問題や最新の保全科学など、各執筆者の専門分野におけるガラパゴス諸島に関する知見を体系的にまとめた書である。

今年、2010年は国際生物多様性年である。筆者一同、ガラパゴスがいつまでも「進化を実感させる場」として保全されていくことを願ってやまない。そして、本書を手にされた方が、ガラパゴス諸島というユニークで希少な特徴を持つ島々とそこに棲む生き物たち、そして保全科学について興味を抱く一助となれば幸いである。

NPO法人日本ガラパゴスの会
理事長 小野幹雄

第1章 進化論とガラパゴス

チャールズ・ダーウィン、生物進化論─誰しも一度は耳にしたことがあるだろう。
ダーウィンの革命的な著作『種の起源』で提唱された進化論は、今なお現代進化論の骨格をなす考え方であり、世界中の研究者らのもっとも大きなテーマのひとつとなっている。
本章では、ダーウィンが軍艦ビーグル号に乗るまでのエピソードから、ガラパゴスでの自然観察などを通して得た知見、進化論着想のきっかけとなった生き物との出合い、『種の起源』が帰国後20年以上を経て出版された理由などを、進化論の説明とともに概観していこう。(文:平川貴子)

Charles Darwin

© The Complete Work of Charles Darwin Online (http://darwin-online.org.uk/)

第1章 各節

第2章 ユニークな生態系

「諸島全体には少なくとも2,000の火口がある」 『ビーグル号航海記』のガラパゴス諸島の章の冒頭の一節だ。
また、ダーウィンは、「島々は火山によって形成されたもので、各島がかつてひとつだったとは考えにくい」とも述べている。ガラパゴスに棲む生き物が大陸の種とは異なる外見を持ち、さらに諸島内の島ごとでも異なる特徴を持つ理由─それは、ダーウィンの言葉にある地理的な要因によるところが大きい。
本章では、ガラパゴスを取り巻く環境(火山、海流、気象など)と、それにより生まれる特異な生態系について考察する。(文:平川貴子)

フェルナンディナ島ラクンブレ火山の噴火(伊藤秀三撮影)

フェルナンディナ島ラクンブレ火山の噴火
(伊藤秀三撮影)

第2章 各節

第3章 不思議な生き物たち

ガラパゴス諸島は、南米大陸から約1,000kmもの距離を隔てた「絶海の孤島」である。現在ここに棲む生き物たちは、どこからどうやって渡ってきたのか。諸島の生き物たちに警戒心がないといわれるのはなぜか。そして、諸島に訪れたら、どんなユニークな生き物たちに出合えるのか。
本章では、生き物たちのガラパゴス諸島への到来方法を探り、警戒心がなく、至近距離で見ることができる不思議な生き物たちを、豊富な写真とともに紹介していこう。(文:平川貴子)

世界のイグアナの中で唯一海に潜る「ウミイグアナ」(フェルナンディナ島にて波形克則撮影)。

世界のイグアナの中で唯一海に潜る「ウミイグアナ」(フェルナンディナ島にて波形克則撮影)。

第3章 各節

第4章 ガラパゴスの保全科学最前線

世界自然遺産第1号であるガラパゴス諸島は、なぜ危機遺産となってしまったのか。絶滅に瀕する動植物は、どのような研究にもとづき、どのように保護されているのか。私たちが観光で訪れる際の規制はどうなっているのか。諸島の未来を担う子どもたちへの環境教育は─。
本章では、ガラパゴス諸島の「保全科学」について解説する。実際に行われたプログラムの成果のみならず、現在進行中のプログラムや最新情報など─豊富な実例を挙げ、保全科学の最前線に迫る。(文:平川貴子)

絶滅危惧種スカレシア・アフィニスの最後の群落での人工授粉の様子(西原弘撮影)。

絶滅危惧種スカレシア・アフィニスの最後の群落での人工授粉の様子(西原弘撮影)。

第4章 各節
Appendix
あとがき(平川貴子)

まずは懺悔から─学生時代、私が苦手だった科目は理科だ。さらに恥を忍んでいうと、物理と地学の授業中は居眠りしていた時間のほうが多かった。ジャーナリストを夢見る少女は、国語・英語・社会ができれば十分だと決め込んでいたのだ。
このことを今回ほど悔やんだことはない。
昨年の暮れに第2 章の原稿が届いた。第1 章に出てくる『種の起源』は読んでいたし、第3 章は大好きな生き物たちが主役の章だ。第4 章の半分は社会科なので得意分野のひとつである。だが、第2 章には苦手な地学が登場する。慌てて書店に走り、理系の棚の書籍を“大人買い”した。また、新年を迎える瞬間は、読み慣れない海外の論文とにらめっこしていた。誠に貴重な経験である。
「次はガラパゴス諸島の本を書かないか」と声をかけてくれたのは、ソフトバンク クリエイティブの柴崎和弘氏だ。拙著『ペンギンに会いに行こう!!』の出版記念パーティーでのことだった。二つ返事でお引き受けしたものの、日増しに「ガラパゴス本の著者」となることへ違和感が募っていった。
ここで、もうひとつ懺悔しなければならない。私はガラパゴス諸島に行ったことがない。本書の著者13人の中でただひとり、書籍などから得た知識しか持ち合わせていないのだ。これが違和感の理由だった。
ところで、私は、「日本ガラパゴスの会」の一員である。当会の役員は、ガラパゴスに関する第一線の専門家ばかりだ。しかも各人の専門分野は、植物や動物、海洋環境などから観光に至るまで、実に幅広い。各々が専門分野について執筆し、それが一冊の本となったら─想像しただけで胸が躍った。
その高揚が間違いではなく、本書が面白いものに仕上がっているとしたら、それは各著者の功績に他ならない。編者として厚くお礼申し上げたい。せっかちな編者がしつこく原稿の催促をしたことは、笑い話にしてほしいと願うばかりだ。
また、本書にお力添えいただいた方々に謝意を表したい。柴崎氏には、企画から出版まで大変お世話になった。ごぼうデザイン事務所の大悟法淳一氏と永瀬優子氏は、ガラパゴス諸島の魅力を美しいデザインへと昇華してくれた。当会会員の竹ノ内理絵氏は、忠実かつ親しみあるタッチのイラストで本書に彩りを添えてくれた。
最後になったが、本書を手にしていただいたすべての方に、心からの感謝の気持ちを申し述べたい。また、学生諸君には、全科目をまんべんなく学ぶことを強くお勧めする。そして、本書をきっかけとして、ガラパゴス諸島というユニークな島々に興味を持つ方が増えたら嬉しい限りである。諸島の美しい自然の中でお会いできる日を夢見ながら、稿を終えたい。

2010年弥生
平川貴子

「ガラパゴスのふしぎ」出版(2010年3月)以降の更新情報