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Appendix 1. 小さな国エクアドルの大きな宝物 「ガラパゴス諸島」観光ガイド(波形克則)

Appendix 1. 小さな国エクアドルの大きな宝物 「ガラパゴス諸島」観光ガイド(波形克則)

 ガラパゴス諸島の旅行には複数の方法がある。予算や時間、目的に合わせて最適な旅の方法を選んでみよう。

周遊型-複数の島を巡るクルーズプログラム

 広大な海域に点在する島々のほとんどが無人島のため、ガラパゴスで主流になっている旅行方法は定期観光船によるプログラムである。周遊型の旅行はもっとも効率的で機動性に優れているので、短時間で確実に複数の島々を巡ることができる。ほとんどの船は7泊8日で諸島内を巡るスケジュールを一年中定期運航しているが、クルーズ船により上陸サイトが異なるので、見たい動物のいる場所とスケジュールの上陸地を事前に照らし合わせてコースの選択をするとよい。また船により7泊8日のスケジュールを3泊4日と4泊5日に分けられるクルーズもある。時間に制約がある場合にはコンパクトに楽しむ方法として最適だ。

ビーチで寝そべるアシカと観光客

クルーズのプログラムは、上陸地での自然観察だけではなく、海水浴などのレジャーも含まれる。アシカの住まいとなっているビーチで彼らとともに過ごす時間は実に楽しい(エスパニョラ島にて、波形克則撮影)

ビーチで寝そべるアシカと観光客

滞在型-絶海の孤島に流れる時間を満喫

 諸島には人の住む島が4島あるので、それらの島でホテルに宿泊する滞在型の方法もある。人の住んでいる場所とはいえ周囲を海に囲まれた赤道直下の孤島に流れる時間とただよう空気に包まれた滞在経験は格別といえる。国立公園除外地区の滞在になるので、国立公園内の見学にはナチュラリストガイド付きの日帰り観光を利用して楽しむことになる。コースによっては大型船では上陸のできない希少種の楽園もあるので周遊型とは違った楽しみ方ができる。諸島間の移動はスピードボートが定期運航しているので、複数の島々に滞在することも可能である。

ボートによる上陸風景

クルーズで巡る島々のほとんどは港湾施設がないため、砂浜にボートで直接乗りつけるか、岩場にボートを接岸して上陸する。写真はバルトロメ島の上陸風景(波形克則撮影)。

ボートによる上陸風景

マメ知識①観光客はどのくらい増えたのか

 ガラパゴス観光の歴史は、1969年にアメリカとエクアドルの旅行会社が共同で開発したクルーズ船による諸島内周遊ツアーから本格的に始まったといわれている。1979年にユネスコの世界自然遺産第一号に登録された当時の来島者数は11,765人と記録されているが、その後増加の一途をたどり、10年後の1989年には41,899人、20年後の1999年には66,071人、30年後直前の2008年には173,420人に増大している。

マメ知識⓶観光におけるダーウィン研究所の存在

 ガラパゴスの自然が社会・観光開発による致命的なダメージを受けることなく維持できた最大の理由は何か。世界遺産登録よりも早い1964年に保全の旗手となり活動の基地となるダーウィン研究所が設立された事だろう。科学的オブザーバーとして全陸地の97%の国立公園指定地域の保全に寄与し、3%の国立公園除外地域の計画的な開発に貢献したことは高く評価される。諸島の環境調査や生態研究はいうにおよばず、保全活動、環境教育、ガイドの育成など、枚挙にいとまがない功労は今も続けられている。

マメ知識③ガラパゴス観光のルール―禁止行為編

「ガラパゴス観光ルール」の詳細は、4-11を参照してほしい。ここでは、ガラパゴスの豊かな自然と特異な生態系を守るためにやってはいけないこと、禁止行為の一例にふれてみたい。

(1)    トレイルと呼ぶ見学路以外に立ち入らない

(2)    採集・持ち出しはしない

(3)    石でも岩でも移動してはいけない

(4)    動物には触らない・驚かさない・餌を与えない

(5)    見学中に飲食・喫煙はしない など

 このような厳密なルールにより、年間17万人を超える来島者数があっても、直接的な環境破壊というインパクトをおよぼすことはなく、またかつてはダーウィンが目にしたかもしれない光景を今日でも楽しむことができ、さらに将来未来に残せるのである。

 小さな国エクアドルの大きな宝物、ガラパゴス。その観光は、ここにしかいない生きものとの出合い、安全かつシステマチックなここでしか体験できないプログラムとなっている。