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植生の保全

JAGAでは設立以来、CDF(チャールズ・ダーウィン財団)が行うガラパゴスの植生回復や森林再生事業に、重点を置いて支援をしてきました。これは植生が、生態系を形成する土台として、ガラパゴスの生物多様性を守っていく上で非常に重要な要素であること、またこれまで日本の研究者がガラパゴスに関わった歴史が50年以上と長く、JAGAの創設に関与した歴代理事長・会長らが、植物を専門としガラパゴスでの研究や調査の経験があることから、会の中で植生保全の知見が蓄積し、より適切な支援や助言ができるという判断からでもあります。

現在JAGAで重点的に支援をしているのは、サンタクルス島とイサベラ島におけるガラパゴス固有の植物「スカレシア」が作る森林の保全です。
「スカレシア」はキク科の植物で、樹木の少ないガラパゴスで、「草」として島に渡ってきた祖先種が「木」のように進化し、広大な森林を形成するようになった、ガラパゴス独特の生態を持ち、スカレシアの森林はフィンチやゾウガメなど固有動物の生息地にもなっています。 ところが、スカレシア林が広がる雲霧帯は、水分条件に恵まれているため、古くから農地として開拓されてきました。また、開墾が制限された近年では、ブラックベリーなどの繁殖力の強い外来植物に生育地を大きく奪われています。そのため、最も広くスカレシア林のあったサンタクルス島では、この森の面積が本来の1%未満にまで減少し(下図)、消滅の危機にあります。同時に、固有鳥類の営巣数や生息数も大きく減少し、生態系全体が危機に晒されている状態です。

JAGAでは、スカレシアの原生地に土地を持つ農家と共に森林を保全するCDFのプロジェクトを支援しています。スカレシアが本来あった土地の半分以上は現在農地になっているため、森林の消滅を防ぐには、農家の協力は欠かせません。また、現在の農地でも、外来種が繁茂して農作物の生産性が落ちたり、農耕放棄地に外来種が蔓延し、農業の再開が阻まれたりしています。さらに、コーヒー豆を生産している農家では、スカレシアを日陰を作るシェードツリーとして活用しています。外来種の駆除とスカレシアの植林という保全は、農家と保全機関との利害が一致した協働プロジェクトとして、今後協力農家を増やし、森林を徐々に回復させる新しい取り組みです。