ガラパゴスの生き物たちが独自の進化を遂げ、子孫を残してこられた理由は、これまで見てきたとおりである。長い年月を経て、ガラパゴス諸島は、ここで暮らす生き物たちにとって楽園となった。
この“楽園の住人たち”には、諸島の固有種が数多くいる(2-7参照)。また、ひとつの島ですべての生き物に出会えるわけではないので、お目当ての生き物の生息地をあらかじめ知っておくことがポイントだ。
ここでは諸島の生き物について、固有種を中心に27種紹介する。彼らのユニークな生態や生息地などの情報を一覧化したので、旅行時の“生き物ガイドブック”として活用してほしい。
※(固)は、ガラパゴス諸島の固有種、または固有亜種 写真:波形克則
ガラパゴスに生息する海獣(海に生息するほ乳類)の1種で、カリフォルニアアシカの近縁種。諸島全域の海岸でハーレムを形成している。授乳期間が2年なので年子の兄弟で母アシカのミルクを奪い合う微笑ましい光景も見る事ができる。
▶▶3-14参照
アシカ同様、海獣の1種。生息地は諸島全域で確認されているが、アシカのようにビーチで簡単にお目にかかることはない。南極近くの海域が起源といわれるオットセイは、暖かい砂浜が苦手だからだ。岩場の日陰を探してみよう。
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世界最大のリクガメで、オスは体長150cm、体重250kgにもおよぶ。かつては15亜種が存在したといわれるが、現在は11種が生息。ピンタ島最後の生き残りは「ロンサム・ジョージ」と名付けられ、ダーウィン研究所で飼育されている。
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寿命が長く、約60~70年といわれる。東の古い島には見られず、中央から西のサウス・プラザ島など6つの島に生息。陸生の動物なのに木登りが不得意。そのため貴重な食料を確保するためにウチワサボテンを中心にテリトリーを持つ。
▶▶3-5参照
その名のとおり、サンタ・フェ島にだけ生息する固有種。ガラパゴスリクイグアナに比べると、体色は黄色いがやや暗めで均一。また、頭の後ろから尻尾の先まで鶏冠状の突起物がはっきりと並んでいるのも特徴。
▶▶3-5参照
世界で唯一海に潜るイグアナ。諸島全域に生息する。観光サイトでもよく出合えるので、生息地により異なる体色や体長を見比べるのも楽しい。変温動物なので体温を保つために身を寄せ合って陸上で過ごすことが多い。
▶▶3-6参照
体長20~30cm、7種すべてが固有種で、島ごとに体色や体長が異なる。7種のうち1種は10島に生息し、あとの6種は、ピンソン島、フロレアナ島、エスパニョラ島、サン・クリストバル島、ピンタ島、マルチェナ島にそれぞれ1種ずつ生息。
諸島の中央部より西のイサベラ島、フェルナンディナ島などに生息。観光サイトには繁殖地が少ないうえ、日中は採餌のために海にいる時間が長く、なかなか見る事ができない。採餌に出かける前の早朝、戻ってくる夕方以降がねらい目だ。
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諸島に生息する3種のカツオドリの1種。名前の由来にもなっている真っ青な足が特徴。物おじしないため、観光サイトに繁殖地があると目の前でそのユニークな姿を見ることができる。生息地は諸島の全域におよぶ。
▶▶3-9参照
3種のカツオドリのうち、もっとも体が小さい。サン・クリストバル島の北部とフロレアナ島の東の一部を除き、ほとんどが赤道の北の島々に生息している。真っ赤な水かきのあるある足をした立派な海鳥だが、枝にとまり、樹上に巣を作る。
▶▶3-9参照
過去にはアオツラカツオドリと呼ばれていたが、1999年に別種に認定された。諸島の3種のカツオドリの中でもっとも体が大きく重い。そのため、内陸よりも、飛び立つときに上昇する風を利用しやすいクリフを好む。諸島の全域に生息。
▶▶3-9参照
熱帯地方に唯一生息するアホウドリで、諸島内最大の鳥。春分の日を迎えるころ、エスパニョラ島だけに飛来して繁殖し、1月には飛び立つ。若鳥はエクアドルやペルー沿岸の豊かな漁場で暮らし、約5年後に伴侶を求めて再び諸島に戻ってくる。
▶▶3-11参照
その名のとおり羽(翼)が小さい。海中の豊富な餌に恵まれ、飛ぶことをやめたために羽が退化した、世界で唯一飛べないウ。生息地は諸島西側のイサベラ島とフェルナンディナ島だけなので、観光サイトで目にすることは少ない。
▶▶3-13参照
体長105~152cm,翼長200cm以上と、諸島の鳥の中でも大型。生息地は諸島内全域におよぶ。人を恐れないため、ボートの行き交う港や桟橋、魚市場などでもよく見られる。成鳥のオスは、頭が白く首筋が茶色でコントラストが美しい。
体長89~114cm、翼長214~237cmの世界最大級のグンカンドリ。諸島内12カ所に繁殖地が確認され、合計2,000羽が生息。海鳥だが泳げないため、海面すれすれを飛びながら小魚を捕る。カツオドリやペリカンからエサの横取りもする。
▶▶3-10参照
繁殖地がガラパゴスアメリカグンカンドリとほぼ重なるため、2種のグンカンドリを同時に観察できることが多い。2種の違いは、オスの肩の羽の色。緑色ならオオグンカンドリ、紫色ならアメリカグンカンドリだ。
▶▶3-10参照
生息数は約3万羽で、諸島全域に50カ所の繁殖地が確認されている。体色は灰色と白色、頭は黒色。赤いリングに囲まれた大きな黒い目と赤い足が実に美しい鳥。カモメの中でも珍しく夜行性で陽が沈むと採餌を始める。主な餌は小魚とイカ。
諸島内の西側の広い範囲に分布するが、生息数が800~1,000羽と少なく、観光サイトで目にすることが少ない。体色は名前のとおり溶岩の色に溶け込むような灰色で、目の周りの白いリングがアクセントになっている。
諸島内でもっとも“背高のっぽ”の鳥。波打ち際の岩場にじっとたたずみ、海面を凝視している姿をよく見かけるが、このとき羽がマントのように見えて面白い。餌は小魚のほか、季節によってはウミガメやイグアナの子どもも食べる。
若鳥は、こげ茶色に黒色のしま模様が入っているが、成長になると溶岩の色に溶け込むような灰色となる。繁殖地は諸島全域で確認されている。波打ち際の岩陰を覗けば、小魚を狙ってじっと海面を見つめる姿に出合えるだろう。
名前の由来は、頭頂部に生えた白髪のような飾り羽。体は灰色と黒色のしま模様。頭は黒く、頬は白い。繁殖地は諸島全域で確認されている。岩浜の波打ち際に陣取り、じっと海面を見つめて子魚を狙う姿がよく見られる。
繁殖地はフロレアナ島、イサベラ島などで確認されている。かつては観光サイトのラグーンでも良く見られたが、近年は人を嫌ってか繁殖地を移してしまった。生息数は約500羽と少なく、固有種ではないがガラパゴスでは希少な鳥である。
繁殖地はサン・クリストバル島、フロレアナ島、バルトラ島を除く広い範囲で確認されている。希少な存在だが、諸島の食物連鎖の頂点に君臨する。他の動物たちから恐れられる反面、ノスリは人を恐れないので観光サイトで出合う事もある。
繁殖地は諸島内の広い範囲で確認されている。大航海時代以降、ガラパゴスに寄港する船乗りや初期の移住者の格好の食料として、棒で殴られては大量に捕獲され、その数を急速に減らしたといわれる。目の周りの青いリングが特徴。
諸島内のマネシツグミは、種によりくちばしの形が異なる事から4種に分類され、そのうちの1種は6亜種に分類される。集団で社会を形成する習性があり、テリトリー意識が強いので、しばしばグループ同士の抗争に遭遇することもある。
▶▶3-8参照
餌に応じてくちばしの形態が変化した、スズメほどのサイズの小鳥。諸島には13種が生息し、草木の種子を食べるもの、昆虫を食べるものなど、さまざまだ。“滞在中に何種のフィンチを見られるか”は、旅の目的のひとつとして楽しめるだろう。
▶▶3-7参照
頭から腹にかけて朱色をした、ひときわ綺麗な鳥がいたら、それはベニタイランチョウのオスである。背側は燕尾服を着たように真っ黒で、コントラストも美しい。メスは頭から背中にかけては灰色で、腹は白色。繁殖地は諸島内ほぼ全域の高所。