ガラパゴスの在来植物(維管束植物)は553種で、そのうち固有種が234種を占める。これに対して外来種は919種が確認されている(以上の数値は2009年8月時点)。ただし、確認された外来種のすべてが野生化したわけではなく、その割合は2~3割程度にとどまる。
また、確認された外来種数の増加は最近の調査活動の充実による部分もあり、実際に侵入した時期よりも後になって記録されたものが多くある。未発見の外来種、これから新たに到来する外来種もあり、外来種数の数字は今後も増え続けていくだろう。
確認された外来植物種数は、サンタ・クルス、サン・クリストバル、イサベラ、フロレアナの4島において圧倒的に多い。これらの4島は現在ヒトが居住し経済活動を営んでいる有人島である。無人島への外来種への拡散は有人島に比べれば少ないが、サンティアゴ島だけが例外である。同島ではかつて採塩場が操業され、ヒトが居住していた時期がある。このため、同島で確認された外来種数は無人島と有人4島の中間の値を示している。
このように、外来植物種はヒトの居住や経済活動と密接に関連している。チャールズ・ダーウィン財団の普及啓発用ポスターでは、外来植物種のうち鑑賞用が50%、食用、薬用がそれぞれ20%で、「偶然にやって来た植物はごくわずか」と強調されている。
図:Alan Tyeほか、“Increase in the number of introduced plant species in Galapagos”, Galapagos Report 2006-2007, CDF, GNP and INGALA, pp.133-135, Figure2をもとに作成。
いずれも2009年8月、サンタ・クルス島高地にて西原弘撮影。
ガラパゴス諸島内で、居住、農耕、牧畜、その他の経済活動を行ってよい場所(居住・農耕地区)は陸域の3%に限られているが、外来種はまずそこに上陸し、97%の保護区域へと侵入していく。また、外来植物種の半数が観賞用である。したがって、居住・農耕地区に生育する外来植物を減らすことが重要だ。
この点に着目し、チャールズ・ダーウィン財団が進めているのがネイティブ・ガーデン・プロジェクトである。
プロジェクトの内容は、①住民にどの植物が外来種でどれが在来種かを教える、②自分たちの庭に植えるべき在来種の苗を配布する、③公共施設の周囲の庭や町中の公園・学校などの植木を外来種から在来種に変える、④在来種の育苗や造園技術を住民に授けてコミュニティ・ビジネスとしての自立を支援する、など。
移入と駆除のイタチゴッコではなく、外来種は「元から断たなきゃダメ!」ということで、これ以上の外来植物の移入を防止することがプロジェクトの狙いである。
プロジェクト名を日本語にすれば、「ガラパゴス在来種で庭をつくろう!」であるが、裏を返せば「あなたの庭から、そしてガラパゴスから外来植物を追放しよう!」ということだ。
このプロジェクトは、サンタ・クルス島高地の農村ベジャ・ビスタに設置されたチャールズ・ダーウィン研究所の種苗所で2007年からスタートした。2008年からは、日本のBESSフォレストクラブの支援によりサン・クリストバル島でもプロジェクトが展開されている。2名の現地スタッフを訓練し、同島の在来種50種以上の苗を育成して安価で住民に分けたり、学校と協力して普及啓発活動を行っている。
左/サン・クリストバル島のチャールズ・ダーウィン財団種苗所兼環境教育センター、右/プロジェクトのマスコット「ウチワサボテン君」。
左/種苗所で育てている苗、右/学校での人形劇による普及啓発活動。
左/普及啓発用資料(在来種図鑑)、右/サン・クリストバル島プエルト・バケリソ・モレノの波止場に設けられたネイティブ・ガーデンの例(いずれも固有種 Lecocarpus darwini)