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2-3. 今なお続く火山活動 増え続ける諸島の陸地(松岡數充)

2-3. 今なお続く火山活動 増え続ける諸島の陸地(松岡數充)

 2009年4月、ガラパゴス国立公園局は、ガラパゴス諸島西端にあるフェルナンディナ島ラクンブレ火山で噴火があり、溶岩が海中に流入したと報告した(チャールズ・ダーウィン研究所から発信された、2009年4月21日付プレスリリースより)。ガラパゴス諸島では、このような火山活動が2〜3年おきに報告されている。ガラパゴスの陸地は、今なお増え続けているのである。

西に行くほど新しい島

 ガラパゴス諸島のはるか西方の太平洋海底には、東太平洋中央海嶺が南北に走る。そこで新たに誕生した海洋底はナスカプレートと呼ばれ、北側にあるココスプレートと共に東方に移動する。ガラパゴス海台はこのナスカプレートに乗っている。フェルナンディナ島周辺の海底下にはガラパゴスホットスポットと呼ばれる、ナスカプレートを突き破るマグマの吹き出し口がある。そこから間欠的にマグマが供給されている。これが時をおいて噴火する火山の正体だ。ガラパゴスホットスポットはかつてはガラパゴス海台の東に位置するカーネギー海嶺の供給源でもあり、その出現は約1,500万年前にさかのぼる。以降、このホットスポットからは絶え間なくマグマが噴き出し、島を形成してきたのであろう。現在では、新たに誕生した島はナスカプレート上にあり、時とともに東南東へ移動し、ホットスポットから遠ざかっていく。つまりガラパゴス諸島は、東南島に行くほど古い島でできているのである。

東の島に、西の火山の将来を見る

 ガラパゴスホットスポットは複数の噴出口を持つ。諸島内最大の島であり、6つの火山から成るイサベラ島を例にとってみよう。イサベラ島は、陸続きで、北からウォルフ火山、ダーウィン火山、アルセド火山、シエラ・ネグラ火山、セロ・アスール火山などを抱えている(2-1の「ガラパゴス諸島の地図」参照)。ガラパゴスの島々を乗せたナスカプレートは、東南東へ年間5 cmほどの速度で移動する。したがって、ホットスポットから離れた火山は活動を停止し、東南東に向かう。現在の位置とその移動方角から推測すると、ウォルフ火山やダーウィン火山の将来はサンティアゴ島に、アルセド火山はサン・クリストバル島に、シエラ・ネグラ火山やセロ・アスール火山はエスパニョラ島の位置に重ねることができる。

プレート移動

ナスカプレートは東南東(図では右側)へ年間約5cmの速度で移動するため、ホットスポットから離れた東側の島ではやがて火山活動が停止する。

図:ARAUCARIA XXI Galapagos Conservacion y desarrollo en las islas encantadas(GNP 2005, Fig. 3)をもとに作成。

プレート移動

イサベラ島、フェルナンディナ島の火山

左上/イサベラ島・アルセド火山遠景(盾状火山)、左下/フェルナンディナ島での噴火の様子(2009年4月21日のダーウィン研究所プレスリリースより)、右上/ウォルフ火山火口にたまる硫黄(松岡敷充撮影)。

イサベラ島、フェルナンディナ島の火山

 フェルナンディナ島やイサベラ島の年齢は0〜数十万年である。サンタ・クルス島は約200万年前、最も東方に位置するエスパニョラ島を形成したマグマが噴出した年代は350〜400万年前とされる。しかし、海底地形を見ると、さらに東方にはカーネギー海嶺との間の海面下に古い火山が存在する。その噴出年代は1,000万年前を越すであろう。今は人為的要因による地球温暖化に関心が高まっているが、地球史から見るとごく最近のおよそ100万年以降から氷河期に入り、氷期と間氷期とが繰り返し訪れた。それとともに海水面は激しく上下したのである。これらの高まりは、今は海面下にあるが、およそ2万年前の氷河期では海水面が120〜140mも低下していたことから、水深140mまでの高まりはその頃は島として存在していたということになる。ガラパゴス諸島の海陸分布は、時とともに変化してきたのである。

生態系成立に要する時間

 ガラパゴスの生き物たちはいつ頃大陸からどのようにして渡ってきたのであろうか。現在のガラパゴス諸島を見るとミコニアやスカレシア、パロサントなどの植物が生い茂るサンタ・クルス島やサン・クリストバル島は、誕生後200万年ほど経過している。とすると、ガラパゴスでは森林を育むことが可能な土壌ができあがるには100万年ほどの時間が必要だといえる。それくらいの時間をかけて森ができ、そこに動物たちが棲みつくようになった。このような生態系は、1,500万年前のガラパゴスホットスポットの出現がなければ成立していない。ガラパゴスの生き物は、今では海面下にある島々を舞台に進化を遂げてきたこと、それに関わった年代は1,000万年のオーダーであることを忘れるべきではない。

ミコニアが生い茂るサン・クリストバル島

サン・クリストバル島のハイランドにて、花をつけたミコニア(波形克則撮影)。島の誕生から100万年以上の時間を経て、このような森林を育む土壌ができあがった。

ミコニアが生い茂るサン・クリストバル島