外来種とは、本来の移動能力を超えて、人の活動により移動させられた生物のことをいう。これに対して、自然の状態で、いわば「自力で」移動し定着した生物が在来種で、その中でも、その地域にしか見られない生物を固有種という。
外来種は、移入先の地域の在来種と競合し、生態系のバランスを壊したり農林水産業に被害を与えたりすることがあり、特にガラパゴスのような海洋島では大きな問題になる。
ガラパゴスの場合、1535年のトマス・ベルランガによる発見以降に移入された生物が外来種ということになる。
ガラパゴスに意図的に持ち込まれ野生化した外来種としては、ヤギ、ブタなどの動物やグアバ、アカキナノキといった植物が挙げられる。これらは、海賊船や捕鯨船がガラパゴスを根城にして活動していた16~18世紀から、19世紀以降の入植地開拓に伴って持ち込まれた。
一方、非意図的に移入された外来種は、人や貨物を運ぶ飛行機、あるいは船舶に随伴する生物で、昆虫やその卵、植物の種子や果実、ホ乳類やハ虫類など様々である。そうした「招かれざる客」の中には、鳥などに被害を与える伝染病の病原菌や媒介動物、寄生虫など目に見えない生物も含まれており、新たな心配の種になっている。
これまでに確認された外来種数は動植物合わせて約1,300種にも達する。
参考:環境省「外来生物法」HP
資料:Graham Watkinsほか、“Introduction”, Galapagos Report 2006-2007, CDF, GNP and INGALA, pp.7-11, Figure1
外来種対策の基本は、何といっても新たに移入される外来生物を発見し、未然に食い止めることである。
1998年以降、ガラパゴスではSICGALという組織が観光客や荷物が到着する空港・港湾で検疫に当たり、外来種の水際チェックを行っている。また、飛行機の機内では、ガラパゴス到着直前に荷物棚に殺虫棚を噴霧している。
しかし、これらの対策の効果は限られており、外来種の到来は日常的な出来事となっている。ある調査では、ガラパゴスに到着する飛行機の2機に1機から昆虫などの無脊椎動物が発見されている。船舶からは、無脊椎動物だけでなく、ハ虫類、ホ乳類、植物も見つかっている。ガラパゴスと大陸を隔てる1,000kmの海を、生物はいまや容易に渡ることができてしまう。
すでに移入された外来種については、どこに、どんな種がどのくらいの数いるのか、また、在来の生態系にどのような影響を与えているのかを調査する必要がある。その上で、在来の生態系に影響を与えずに、目的とする外来種だけを効果的に駆除できる方法を検討し、実施する必要がある。例えば、数株の植物であれば発見したその場で根から抜き取ればよいが、すでに種子ができて広い範囲に散らばっていたり土中に存在する場合にはやっかいである。
動物の場合は1ヶ所にじっとしているわけではないからさらに大変だ。もっとも古くから大きな被害をもたらしたヤギの場合、何十年という歳月、と何百万ドルという費用をかけて、1島ごとに駆除を行ってきた。
移入してしまった外来種への対策は、多くの費用と人手、知恵と時間を要するのである。
左/SICGALによる乗客の預け荷物のX線チェック(グアヤキル空港)、右/乗務員による殺虫剤の噴霧(ガラパゴス到着直前の機内)、2009年8月西原弘撮影。
観光の発展と人口の増加により、飛行機や船の往来が 頻繁になったことで、ガラパゴスと大陸を隔てていた1,000kmの海に、外来種が渡るための「見えない橋」がかかってしまったようなもの。自然の障壁が取り払われ、外来種の侵入は日常的な問題となっている。