世界有数の遺伝学雑誌Heredity(2月25日付)で米国のガラパゴス保全団体ガラパゴス・コンサーバンシー、イェール大学、および英国ニューキャッスル大学の研究グループが、ガラパゴスのサン・クリストバル島に現存種と異なる別種のゾウガメが存在していた可能性を示す研究論文を発表しました。
1906年にサン・クリストバル島の洞窟で発見された骨(上の写真)からDNAを抽出して解析したところ、現在島に生息しているゾウガメ(下の写真)のDNAと一致しないことが判明したのです。
つまり、サン・クリストバル島にはかつて2種類のゾウガメが生息していた可能性が高く、現生種(これまでChelonoidis chathamensisと呼ばれていた)はC. chathamensisではなく、まったく別の新しい分類群であることがわかりました。
これまでサン・クリストバル島に生息するゾウガメは、1906年にカリフォルニア科学アカデミーの探検隊が島の南西部高地を探検した際に洞窟で採取した骨と甲羅をもとに記載されたC. chathamensisという単一種に属しているとされてきました。この時、この探検隊は現在でもゾウガメが生息しているサン・クリストバル島の北東部低地の捜索は行っていなかったのです。
今回発表された論文のポイントは以下の3つです。
1) 現在サン・クリストバル島に生息する8000匹のカメは、正式な説明や学名がない別の分類群(または系統)であるため、C. chathamensisと呼ぶのは正しくないかもしれない。
2) C. chathamensisという名称が属するサン・クリストバル高地の分類群は、ほぼ間違いなく絶滅している。
3) サン・クリストバル島には、20世紀半ばに高地の種が絶滅するまで、高地と低地でそれぞれ異なる営巣地を持つ2種類のカメが共存していた。
今回の研究結果に基づけば、C. chathamensisの名前は絶滅種に譲り、現存する分類群には新しい名前を付けるべきということになります。
サン・クリストバル島とういう、1つの島に2種のゾウガメが存在していた理由に関しては、以下のように考察しています。
1) サン・クリストバル島は歴史的に2つの部分からなり、数百万年前の海面が高い時代には、それぞれ別の島にそれぞれ独立したゾウガメ種が存在していた。
2) 海面が下がると、2つの島は合併してゾウガメの生息地も合併したと考えられる。
3) かつてゾウガメが生息していた現在の南西部の高地には、捕鯨船や20世紀初めの入植者によって絶滅した。一方、低地で乾燥地帯となっている北東部には、現在でもゾウガメが生息している。
今後、絶滅種の学名がChelonoidis chathamensisとなり、現存するサン・クリストバル種には新たな学名が命名されると思われますが、正式決定するまでには時間がかかりそうです。
楽しみに待ちましょう!
情報元:
1. Galapagos ConservancyのFacebook投稿
https://www.facebook.com/GalapagosConservancy/posts/323945999767856
2. Galapagos Conservancyホームページ「ニュースルーム」
https://www.galapagos.org/newsroom/new-taxon-of-giant-tortoise-discovered-in-galapagos-islands/?fbclid=IwAR3xrGUUINCGYifF3MTtK-6qtvqHICNdTW6s_qLBMZj_KHmUgSM3-3J7_b0